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【遺言書マニュアル完全版】遺された家族が揉めない・無効にならない遺言書の作り方

遺言書作成マニュアル

遺言は自分の財産を誰にどのように残すか、自分の意思や想いを確実に伝える手段です。
遺言書は本人が自筆で作成できますが、正しく作成されていないと無効になる可能性があります。
また、自宅で遺言書を保管すると、紛失、盗難、偽造や改ざんの可能性があり、発見されないこともあります。そこで、無効にならないような自筆証書遺言の書き方と保管の仕方を紹介します。

Contents
  1. 遺言書を作ると何がいいのか?遺言書でできることリスト
  2. 遺言の効力はいつから始まるのでしょうか?有効期間はどのくらいですか?
  3. 遺言書にはどのような種類がありますか?
  4. 自筆証書遺言
  5. 自筆証書遺言書保管制度とは?
  6. 公正証書遺言
  7. 秘密証書遺言とは

遺言書を作ると何がいいのか?遺言書でできることリスト

まず、遺言に認められる効力について確認しましょう。

遺言により「相続方法」を指定できます。
具体的には、法定相続分以外の割合で遺産を分ける、特定の遺産を特定の相続人や相続人以外の人に受け継がせることが可能です。
法律では「遺言によって指定された相続方法は法定相続に優先する」と規定されています。

したがって、遺言があれば、法定相続分を超える相続や下回る相続も有効となります。
どのような効力を遺言書によって生じさせることができるのか、具体的な活用方法を見ていきましょう。

特定の相続人に多くの遺産を取得させることができる

複数の相続人がいる場合に、特定の相続人に多めに遺産を取得させたいケースがあります。遺言書を作成すれば、長女、長男、次女など特定の相続人に全ての遺産を取得させることができます。

相続人ではない人に遺産を遺贈することができる

内縁の妻、孫やお世話になった人など、相続人以外の人に遺産を取得させたい方もいます。
遺言書を作成すれば、相続人以外の人に遺産を「遺贈」できます。

遺産を寄付することができる

遺産を遺す相手がいない方の場合、遺言書を作成して遺産を法人や慈善団体などに寄付できます。

子どもを認知することができる

遺言書を作成すると、財産の処分だけでなく身分行為も可能です。
婚姻していない女性との間に子どもがいる場合、遺言書に「子どもを認知する」と記すことで、死後に子どもの認知が可能になります。
生前に認知するとトラブルが予想される場合に有効です。

相続人の廃除(相続権消失)

虐待や重大な侮辱をした相続人に遺産を渡したくない場合、遺言によってその相続人の相続権を消失させることができます。

遺産分割方法の指定、分割の禁止

遺言により、遺産分割の方法を指定したり第三者に委託したりできます。
また、相続開始から5年以内であれば遺産分割を禁止することができます。
これは遺産分割で争いそうなとき、冷却期間を置く意味で有効です。

後見人の指定

自身が亡くなった後で未成年の子どもだけが残され親権者がいない場合、遺言によって第三者を後見人として指定できます。

遺言執行者の指定

遺言により、遺言の内容を実行する遺言執行者を指定できます。
遺言執行者は遺言の内容に従って、金融機関での預貯金の名義変更手続きや不動産の相続登記など必要な手続きを行います。
また、遺言執行者を指定する人の指定も可能です。

遺言の効力はいつから始まるのでしょうか?有効期間はどのくらいですか?

原則として、遺言の効力は遺言書を作成した人(遺言者)が亡くなった時から発生します。
したがって、遺産を引き継ぐ見込みの人は、遺言者が亡くなるまでは遺産に対する権利を持ちません。

また、遺言には有効期限がありません。
たとえ20年前に書かれた遺言書でも、それは有効です。
遺言はいつでも撤回可能で、内容を修正したり、新たに遺言書を作成したりすることもできます。

遺言書にはどのような種類がありますか?

個人が亡くなった後の財産は、遺言書がなくても法定相続によって相続されます。
しかし、「法定相続人以外にも財産を残したい人がいる」「不動産を特定の相続人に相続させたい」「遺産分割で争いになるのを避けたい」などの意思や想いがある場合、遺言書が必要です。

一般的に用いられる遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言は、遺言者が手書きで書くもので、公正証書遺言は、公証人が遺言者から聞いた内容を文章にまとめて公正証書として作成するものです。

また、「秘密証書遺言」も存在しますが、これは利用数は少なく、内容は秘密に保ちつつ、存在だけを公証人と証人2人以上で証明してもらうものです。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者自身が遺言の全文、日付、氏名を手書きし、押印する遺言書です。
遺言書の本文はパソコンや代筆で作成できませんが、平成31年(2019年)1月13日以降、財産目録はパソコンや代筆でも作成可能になりました。
財産目録は、預貯金通帳の写しや不動産(土地・建物)の登記事項証明書などの資料を添付する方法で作成できますが、その場合には、全てのページに署名と押印が必要になります。

とまとちゃん
とまとちゃん

自筆証書遺言は、基本的にすべて自分で手書きして作ります。

自筆証書遺言の長所と短所は以下のとおりです。

自筆証書遺言の長所

  • 費用がかからず、いつでも手軽に書き直すことができる。
  • 遺言の内容を自分以外に秘密にできる。

自筆証書遺言の短所

  • 一定の要件を満たしていないと、遺言が無効になる可能性がある。
  • 遺言書が紛失したり、忘れ去られたりする可能性がある。
  • 遺言書が無断で書き換えられたり、捨てられたり、隠されたりする可能性がある。
  • 遺言者の死亡後、家庭裁判所で検認の手続が必要になる。

遺言書の「検認」とは何ですか?

遺言書の保管者や発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」を請求する必要があります。「検認」とは、相続人に遺言の存在を知らせ、遺言書の形状や内容を明確にする手続きです。
これは、遺言書の偽造・変造を防止するためのものです。
この手続きには家庭裁判所での手続きが必要となるため、相続人には負担がかかることがあります。

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

遺言書の検認:裁判所
びーるくん
びーるくん

検認手続のことをものすごく簡単に説明すると、「裁判所で開封する手続」のことです。

遺言書の確認・検認

自筆証書遺言は「検認」が必要なため、相続人は遺言書を勝手に開封してはなりません。
ただし、遺言書保管制度を利用して法務局に原本を保管している場合は、検認は不要となります。

自筆証書遺言が無効になり、また争いの種になりやすい理由

自筆証書遺言は、その形式が法律により厳格に定められており、これに反すると無効とされます。
具体的には「自筆証書による遺言は、遺言者が全文、日付、そして氏名を自書し、さらに印を押さなければならない」と民法968条1項で規定されています。
したがって、本文をパソコンで作成したり、印を押さなかった場合、その遺言書は無効となります。

さらに、自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言は第三者によるチェックが予定されていないため、認知症等で十分な判断能力を欠いた状態で作成される事例があります。
そのような場合、遺言の有効性を巡り相続人間で争いが生じることがあります。

とまとちゃん
とまとちゃん

素人でも気軽に作れてしまうだけに、法律的に見たら穴だらけで、その穴を相続人たちがそれぞれ自分の都合のいいように解釈して争いになる場合が多いのです。

びーるくん
びーるくん

自筆証書遺言を作るなら、無料の法律相談でもいいから、弁護士さんや司法書士さんにアドバイスをもらって作るのが本当におすすめです!本当に!!

なお、相続人が最低限相続できる権利である「遺留分」を侵害する遺言書も、法的には有効です。
ただし、侵害された相続人は「遺留分の保証」を請求できます。
これが争いの火種になる可能性があるため、遺留分の侵害には注意が必要です。

自筆証書遺言の書き方のポイント

遺言の要件以外にも、以下の書き方のポイントを押さえておくとよいでしょう。

財産を把握するための書類を集める

遺言書を作成する際には、遺産の内容を把握することが必要です。
事前に以下のような財産に関する資料を集めておきましょう。

  • 不動産の登記簿(全部事項証明書)
  • 預貯金通帳、取引明細書
  • 証券会社やFX会社、仮想通貨交換所の取引資料
  • ゴルフ会員権の証書
  • 生命保険証書
  • 美術品や骨董品などの動産の明細書

明確に誰が何を相続するかを指定する

誰がどの遺産を相続するのか、明瞭に記述しましょう。遺産の分配が曖昧だと、遺言書がトラブルの原因になる可能性があります。

例えば、「金融資産5千万円を兄弟で等分し、残りの財産は全て妻が相続する」と記述した場合、現金と株式などの金融資産が含まれている場合、5千万円の配分に無数の解釈が生じ、トラブルの原因となります。

遺言書を作成する際、例えば長男には「○○銀行○○支店の定期預金 口座番号○○○○」、次男には「A株式会社の株式 数量○○株」など、「どの遺産を、どの程度相続させるのか」を確定しておきましょう。

とまとちゃん
とまとちゃん

書き方がしっかりしていない場合、相続人はそれぞれ自分にとって都合のいい解釈をしてしまうので、相続争いが起こります。
赤の他人が見ても誰に何を相続させたいのかがハッキリわかる書き方をしましょう!

財産目録はパソコンで作成可能

遺言書には、「財産目録」を作成して添付しましょう。これは、どのような遺産があるのかを明示するための一覧表で、資産と負債の内容及びその合計額を示します。自筆証書遺言であっても、財産目録だけは代筆やパソコンを利用して作成することが可能です。預貯金通帳のコピー、不動産全部事項証明書などの資料を添付することも可能です。ただし、パソコンや資料で代替する場合、全ページに署名と押印が必要です。

不動産全部事項証明書の「表題部」は写し、預貯金については通帳などで支店名や口座番号を確認し、間違いがないようにしましょう。

遺言執行者を指定する

遺言書には遺言執行者を指定しておくと、遺言内容を円滑に実現できます。信用できる相続人や弁護士などの専門家を指定しましょう。

訂正部分は二重線で消し、印鑑を押す

間違えた部分や追記したい部分の「加除訂正」には、法律が定めるルールがあります。まず、間違った部分は二重線で消し、「吹き出し」を使って正しい文言を記入します。

次に余白部分に「2字削除、4字追加」などと記述し、署名と押印をします。修正テープを使用したり、部分を黒く塗りつぶしたりすることは避けましょう。署名と押印が抜けていると、遺言書全体が無効になります。

自筆証書遺言の書き方

民法968条では「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。これらは自筆証書遺言を作成する際に、最低限守るべきルールです。以下の5点を必ず確認してください。

全文を自筆で書く(財産目録は除く)

自筆証書遺言では、タイトルの「遺言書」や本文など、基本的に全文を遺言者が自筆で書く必要があります。パソコンや代筆は認められていません。

ただし、財産目録の部分だけはパソコンを使ったり通帳のコピーをつけたりしても大丈夫です。その際には、添付した書面に遺言者の署名押印が必要です。

署名する

遺言書には必ず遺言者の署名押印が必要です。署名も自筆で行う必要があります。

作成した日付を明記する

遺言書の作成日は正確に記入してください。「○月吉日」などと書くことは避けてください。

年度の書き忘れがあると無効になる可能性があるため、漏れがないようにしましょう。なお、複数の遺言書が存在する場合は、新しい日付のものが有効となります。

印鑑を押す

署名したら印鑑を押す必要があります。押し忘れたり、印影が不明瞭だったり消えていたりすると、遺言書が無効になる可能性があります。使用する印鑑は認印でも構いませんが、実印の方が信用性が高くお勧めです。

訂正のルールを守る

遺言書の文章訂正方法には法律で定められたルールがあります。これを守らないと、訂正した部分が無効になり、訂正前の遺言の効力が維持されます。「4-5. 訂正部分は二重線で消し、印鑑を押す」で訂正方法について詳しく説明します。

自筆証書遺言の注意点

自筆証書遺言を作成する際の注意点と、トラブルを防ぐために知っておくべきことを紹介します。

複数人の共同遺言は無効

遺言書は1人1人が自分の分を作成する必要があります。共同での遺言は認められていません(共同遺言の禁止 民法975条)。たとえば、夫婦が共同して「私たち夫婦は以下のように遺言します」などとする遺言書を遺しても無効になります。

ビデオレターや音声遺言は無効

遺言書は書面により作成する必要があります。ビデオレターや音声の録音での遺言は認められていませんので、間違えないようにしましょう。

しかし、遺言者の意志を伝える手段としてビデオレターや音声録音には一定の意義があります。遺産相続のトラブルを防止するための有効な手段といえます。それでも、遺言書は別途作成するべきです。

「任せる」など、あいまいな表現は避ける

あいまいな表現は、解釈を巡って相続人間でトラブルになる可能性があります。「取得させる」「相続させる」「遺贈する」などの明確な表現を使いましょう。「任せる」や「託す」といった言葉は、「管理を頼みたい」との解釈も可能になります。「渡す」や「譲る」などの表現も避けるべきです。

遺留分侵害はトラブルの元

相続人には、主張すれば最低限受け取ることができる「遺留分」という権利があります。したがって、遺留分を侵害された側は「遺留分に相当する金額を私にください」と主張できます。「全財産を長男へ」といった、他の相続人の遺留分を侵害する遺言書はトラブルの原因となるので、注意が必要です。

勝手に開封せず、裁判所で検認を受ける

自筆証書遺言がある場合、相続人は原則として家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。検認は、裁判所で遺言書の内容や状態を確認する手続きです。検認を完了しなければ、遺言書による不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどが受けられません。

ただし、法務局に自筆証書遺言を預けている場合、検認は不要です。

相続開始時に財産がなくなった場合

遺言書を作成しても、相続開始時までに財産がなくなるケースがあります。その場合、失われた財産に対する遺言は部分的に無効となり、残りの部分は有効です。

自筆証書遺言書保管制度とは?

自筆証書遺言書は、紙とペン、印鑑があれば特別な費用をかけずに1人で作成できます。ただし、遺言書を作成したとしても、一定の要件を満たさなければ無効になることがあります。また、自宅で保管している間に遺言書が改ざん・偽造されたり、紛失したりするリスクがあります。遺族が遺言書の存在に気づかないこともあります。

そこで、自筆証書遺言の手軽さを生かしつつ、これらの問題を解消するために「自筆証書遺言書保管制度」が2020年7月10日から始まりました。この制度では、自筆証書遺言書とその画像データを法務局で保管します。全国312か所の法務局で利用できます。この制度の長所は次のとおりです。

自筆証書遺言書保管制度の長所

適切な保管によって紛失や盗難、偽造や改ざんを防げる

遺言書の原本と、その画像データが法務局で保管されるため、紛失や盗難のリスクはありません。また、法務局で保管されることで、偽造や改ざんのリスクもありません。これにより、遺言者の意思が守られます。

無効な遺言書になりにくい

民法が定める自筆証書遺言の形式に適合するかどうかは、法務局職員が確認します。これにより、表面的なチェックが受けられます。ただし、遺言書の有効性を保証するものではありません。

相続人が遺言書を発見しやすくなる

遺言者が亡くなったとき、指定された人に法務局で遺言書が保管されていることを通知します。この通知は、遺言者が亡くなった事実を確認した法務局の職員が行います。遺言書が見つからないことを防ぎ、遺言書に基づいた遺産相続を行うことが可能になります。

検認手続が不要になる

遺言者が亡くなった後、遺言書(公正証書遺言書を除く)を開封する際には、家庭裁判所に遺言書を提出して検認を受ける必要があります。これにより、遺言書に基づく不動産の名義変更や預貯金の払い戻しを行うことができます。自筆証書遺言書保管制度を利用すると、検認が不要になり、相続人が遺言書の内容を迅速に実行できます。

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、安心して遺言書を残すことができます。

それでは、遺言書の作成方法や法務局への預け方を以下の章で説明します。

自筆証書遺言書を作成する際の注意点

遺言書は自分の意志を遺産相続に反映するためのものです。まず、自分の財産をリスト化し、整理しましょう。遺言書には、誰にどの財産をどのぐらい残すかを具体的に記載する必要があります。自筆証書遺言書は、民法に定められた最低限の要件を満たしていないと、作成したのに無効になってしまうので注意が必要です。

民法で定められた自筆証書遺言書の要件

遺言書の全文、日付、氏名の自書と押印
  • 遺言者本人が遺言書の全文を自書します。
  • 日付は遺言書を作成した年月日を具体的に記載します。
  • 遺言者が署名します。(自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、住民票の記載どおりに署名します)
  • 押印は認印でも問題ありません。
自書によらない財産目録を添付する場合
  • 財産目録は、パソコンで作成した目録や預金通帳や登記事項証明書等のコピーなどを添付する方法でも作成可能です。その場合は各ページに自書による署名と押印が必要です(両面コピーなどの場合は両面に署名・押印が必要です)。
  • 自書によらない財産目録は、本文が記載された用紙とは別の用紙で作成します。
書き間違った場合の変更・追加
  • 遺言書を変更する場合には、元の記載に二重線を引き、訂正のための押印が必要です。また、適切な場所に変更箇所の指示、変更した旨、署名が必要です。

作成時の注意事項

  • 誰に、どの財産を残すか財産と人物を特定して記載する。
  • 財産目録を添付する場合は、別紙1、別紙2などとして財産を特定する。
  • 財産目録にコピーを添付する場合は、その内容が明確に読み取れるように鮮明に写っていることが必要。
  • 推定相続人の場合は「相続させる」または「遺贈する」、推定相続人以外の者に対しては「遺贈する」と記載する。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の様式

  • 用紙はA4サイズで、裏面には何も記載しない。
  • 上側5ミリメートル、下側10ミリメートル、左側20ミリメートル、右側5ミリメートルの余白を確保する。
  • 遺言書本文、財産目録には、各ページに通し番号でページ番号を記載する。
  • 複数ページでも綴じ合わせない。

自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けるには?

遺言書を法務局で保管するためには、遺言者本人が法務局に出向いて、保管の申請手続をする必要があります。

管轄の法務局を選ぶ

自筆証書遺言書保管制度を利用できる法務局は、全国に312か所あります。その中から、次のいずれかを管轄する法務局で申請手続をします。

  1. 遺言者の住所地
  2. 遺言者の本籍地
  3. 遺言者が所有する不動産所在地

申請書記入する

法務局への保管申請は、申請書を提出して行います。申請書は、法務省ウェブサイトからダウンロードできます。また、最寄りの法務局の窓口でも入手できます。

申請書には、遺言者の氏名、生年月日、住所などのほか、遺産を受け取る人(受遺者)の氏名や住所などを記載します。

また、遺言者が亡くなった時に、遺言者があらかじめ指定した方に対して、通知を希望する場合は、申請書のうち、「死亡時の通知の対象者欄」にチェックを入れて、必要事項を記載すると、通知が実施されます。

事前予約をする

法務局で行う手続は、事前予約制です。スムーズに手続をするために、必ず予約専用ウェブサイト、電話または窓口であらかじめ予約する必要があります。

ウェブサイトで予約

法務局手続案内予約サービスの専用ウェブサイト

電話または窓口で予約

法務局・地方法務局所在地一覧

法務省「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」

申請する

予約した日時に申請に必要な書類を持って、法務局に行き、申請を行います。

[必要書類]
  • 自筆証書遺言書
  • 申請書
  • 本人確認書類(官公庁から発行された顔写真付きの身分証明書)
  • 本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
  • 遺言書が外国語により記載されているときは日本語による翻訳文
  • 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)

必要な書類に不足等がなければ、原本とその画像データが保管され、保管証が渡されます。この保管証には、遺言者の氏名、出生の年月日、手続を行った法務局の名称・保管番号が記載されます。なお、保管証は再発行されませんので、大切に保管してください。

自筆証書遺言書保管制度を使うと、相続人等は何ができるのか?

遺言者が亡くなると、相続が始まります。遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合、相続人等は法務局で次の手続きが可能です。ただし、これらの手続きは遺言者が亡くなった後(相続開始後)でなければ実行できません。

遺言書が預けられているか確認する

相続が始まると、相続人等は自分が特定の遺言者の相続人等であるかと、その遺言書が保管されているかどうかの証明書(遺言書保管事実証明書)を取得できます。

遺言書の写しを取得する

自分が相続人等となっている遺言書が保管されていることが遺言書保管事実証明書で確認できた場合、遺言書の写し(遺言書情報証明書)を取得できます。この証明書は、不動産の相続登記や各種手続きに利用可能です。家庭裁判所での検認は必要ありません。また、一人の相続人等がこの証明書を取得した場合、他の相続人等に遺言書が保管されている旨の通知が法務局から送られます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で証人2人以上の立会いの下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べ、公証人が筆記により作成する遺言書です。遺言書の原本は公証役場で保管されます。

公正証書遺言の長所と短所は以下のとおりです。

公正証書遺言の長所

  • 法律知識がなくても、公証人という法律の専門家が遺言書作成を手がけてくれるので、遺言書が無効になる可能性が低い。
  • 遺言書が無断で書き換えられたり、捨てられたり、隠されたりする可能性がない。
  • 家庭裁判所での検認の手続きが不要。

公正証書遺言の短所

  • 証人2人が必要。
  • 費用や手間がかかる(遺言書の作成費用は、目的の価額に応じて設定されます)。

公正証書遺言作成の必要書類

公正証書遺言の作成には、以下の資料が必要です。これらの資料を準備して公証人に相談すると、打ち合わせがスムーズに進行します。

ただし、事案により他にも資料が必要となる場合がありますので、詳細は最寄りの公証役場にお尋ねください。

  • 遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書。ただし、印鑑登録証明書の代わりに運転免許証、旅券、マイナンバーカード(個人番号カード)、住民基本台帳カード(平成27 年12 月に発行を終了していますが、有効期間内であれば利用可能)等の官公署発行の顔写真付き身分証明書を遺言者の本人確認資料にすることもできます。
  • 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本。
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)。
  • 不動産の相続の場合、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書の課税明細書。
  • 預貯金等の相続の場合、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー。

公正証書遺言をする場合には、証人2名が必要です。遺言者が証人を用意する場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業をメモしたものをご用意ください。

公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか?

公正証書遺言の作成は、通常、以下の手順で行われます。

公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼

公証人に直接、遺言の相談や遺言書の作成の依頼をします。これは、公証役場に電話やメールで問い合わせたり、予約を取って公証役場を訪れることで行います。

相続内容のメモや必要資料の提出

相続内容のメモ(遺言者がどのような財産を持っていて、それを誰にどのような割合で相続させるか、または遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)と、必要書類を公証人に提出します。

遺言公正証書(案)の作成と修正

公証人は、提出されたメモと必要資料に基づいて遺言公正証書(案)を作成し、それを遺言者に提示します。修正が必要な箇所があれば、それに従って遺言公正証書(案)を修正します。

遺言公正証書の作成日時の確定

遺言公正証書(案)が確定したら、公証人と遺言者との間で打ち合わせを行い、遺言者が公正証書遺言をする日時を決定します。

遺言の当日の手続

遺言当日には、遺言者本人から公証人に対し、証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げていただきます。遺言の内容に間違いがない場合には、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印します。そして、公証人も遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書が完成します。

遺言当日に以上の手続を行うに際しては、遺言者が自らの真意を任意に述べることができるように、利害関係人には席を外していただく運用が行われています。

公正証書遺言の証人は、どのように手配しますか?

遺言者自身が手配する場合

公正証書遺言を行うには、遺言者の真意を確認し、手続きが適切に行われたことを保証するため、2名の証人が立ち会うことが必要です。証人は遺言者が自身で手配できますが、以下の者は証人になることができません:①未成年者、②推定相続人、③遺贈を受ける者、④推定相続人または遺贈を受ける者の配偶者や直系血族。

公証役場に紹介を求める場合

適当な証人が見つからない場合は、公証役場で紹介を求めることも可能です。

公正証書遺言の作成手数料はどれくらいですか?

公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で法定されています。以下にその概要を説明します。なお、相談は全て無料です。

公正証書遺言を作成するには以下の費用が必要です。

  • ①公正証書作成手数料
  • ②証人2人の日当
  • ③公証人の出張費用、交通費(公証役場以外で作成する場合)

①公正証書作成手数料

遺言書に書く財産の合計額手数料
100万円まで5,000円
200万円まで7,000円
500万円まで11,000円
1,000万円まで17,000円
3,000万円まで23,000円
5,000万円まで29,000円
1億円まで43,000円

※手数料は財産を譲り受ける人ごとに計算し、合計します。

※財産の総額が1億円未満の場合は、11,000円加算されます。

②証人の日当

証人2人の日当金額
1人につき5,000円~15,000円程度

自身で証人を探せば、この費用は必要ありません。ただし、証人2人には遺言書の内容が伝わります。内容を他人に知られたくない方は、専門家に依頼するのも一つの方法です。

③公証役場以外で作成する場合(公証人の出張)

内容費用
公正証書作成の手数料①の手数料の1.5倍
公証人の日当1日20,000円4時間以内は10,000円
交通費実費分

秘密証書遺言とは

「秘密証書遺言」は、内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書のことを指します。遺言の内容を公開せず、遺言書の存在だけを確認することが目的です。ただし、実際の業務ではほとんど利用されていません。

秘密証書遺言のメリット

  • 遺言の内容を誰にも知られません。
  • 文字をあまり書けなくても、署名と押印だけは自分で行えば、他の内容はパソコンや代筆で作成可能です。

秘密証書遺言のデメリット

  • 無効になりやすいです。
  • 紛失や隠匿のリスクがあります。
  • 発見されないリスクもあります。
  • 検認が必要です。
  • 手間や費用がかかります。
  • 証人が2人必要です。

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