「お兄ちゃん、ずっと行方不明だったのに、親が亡くなったとたん相続の権利を主張してきた…」
こんなドラマみたいなお話、本当にあるんですよね。
しかも、そのお兄ちゃんのお子さんは実質ご両親が育ててきた。
さらに、晩年のご両親のお世話はあなたが一手に担ってきた。
なのに、相続の段になったら“蒸発兄”がいきなり登場し、「俺にも遺産をよこせ!」なんて…。
正直、「ふざけないでよ!」って叫びたくもなるでしょう。
しかし、相続には法律が関わってくる以上、「長年いなかったから相続なんてさせない!」とは、そう簡単にはいきません。
とはいえ、対策も何もせず放っておくと、あなたが納得いかないような相続結果になる可能性も。
ここでは、できるだけわかりやすく、この“蒸発していた兄が相続を主張”してきたときの対策方法を考えてみましょう。
1.「兄が突然戻ってきた!」よくある話なの?

実はわりとあるんです。
相続の話になるまで消息不明だった親族が、どこからともなく現れるケース。
周囲は「今ごろ何しに?」と驚きますが、本人としては(もしくは裏で手引きする誰かがいて)、「相続分をもらいに来た」わけですよね。
感情的には「あなたのかわりにずっと支えてきたのは私なんだから、今さら出てこないで!」と言いたいところ。
でも、法律は相続人の存在をきわめて重くみます。
「家族のもとを離れていたから相続人じゃない」なんてことは基本的にはなく、戸籍上、兄弟がいるならば、その人も法定相続人になります。
行方不明が長かったというだけでは、残念ながら「相続できない理由」にはならないわけです。
2.そもそも相続はどう決まる? 〜知っておきたい基本ルール〜

「兄なんていらない!」という気持ちがあっても、法律上はそうはいきません。
相続には主に次のような基本的ルールがあります。
法定相続分

親が亡くなったときの相続は、通常、配偶者(残っているほうの親)と子どもがいれば、その組み合わせで相続分が決まります。
たとえば、父が亡くなったとして、母と子ども2人(あなたと蒸発兄)がいる場合、「母が1/2、子どもたちが各1/4ずつ」の相続分をもらう権利がある、というのが一般的な計算です。
もちろん、家族構成や財産内容によって変わる場合もあるので、あくまで一例ですが、「相続人には最低限の取り分がある」というのが大原則なんです。
遺言書の力

亡くなった方が生前に「誰にどれだけ相続させるか」を書いた「遺言書」があれば、原則それが優先されます。
ただし、最低限の相続分(遺留分という、法律で保証された取り分)を無視して遺産を配分することはできません。

寄与分(きよぶん)や特別寄与

親の介護や事業の手伝いなどで、その財産の維持や増加に大きく貢献した場合、「寄与分」を主張して、取り分を増やせることがあります。
ただし、認められるには一定の条件や証拠が必要です。
この3つのキーワードを押さえておくと、相続の基礎がわかりやすくなります。
3.「だけど私がずっと親の面倒をみてきたのに!」という不満

あなたからすれば、日々の介護はもちろん、通院の付き添い、洗濯物や食事の用意、時には兄の子ども(つまり孫ですね)を預かって世話をするなんてこともあったかもしれません。
しかも、兄は行方不明だった。
連絡もせず、生活費の援助だってゼロ。
それなのに、いざ親が亡くなったら戻ってきて「相続は平等に!」なんて言われると腹立たしいですよね。
ところが、法律上は「親に何もしていない人でも、相続人としての地位は変わらない」のが原則です。
ここがツラいところ。
4.「どうにかして兄の取り分を減らせない?」という疑問
感情的には「1円も渡したくない!」かもしれませんが、法律的には完全に排除するのはかなりハードルが高いです。
そこでカギになるのが、寄与分(きよぶん)という仕組みです。
寄与分ってなに?

簡単に言えば、「特別な貢献をした人に、相続時にちょっと上乗せしてあげましょう」という制度です。
例えば、
こういった事情があれば、「私はこんなに頑張ったから、法定相続分より多めに相続をもらう権利がありますよ」というわけです。
ただし、寄与分を主張するには証拠や具体的な実績が必要です。
たとえば、どれだけ介護に時間とお金がかかったか、領収書や日記、介護日誌などがあれば証明に役立ちます。
兄が蒸発していた間にどんな苦労をしたか、可能ならば周囲の証言を得るのもひとつの手です。
5.「兄の子どもを両親が育てた」場合はどうなる?
「兄がいなくなったから、その子は私の両親(つまり祖父母)が育ててきた」というケースも聞きます。
孫を実質的に育てたことで、両親がその子に使った費用があるかもしれません。
しかし、こうした「養育費」は相続の場面では、「兄の取り分を減らす」方向には反映されにくいのが現実です。
「親(祖父母)がかわいい孫を助けるために費用を出した」という解釈になることが多く、その分を「特別受益」として兄側にマイナスできるかどうかは、状況に左右されます。
また、「兄の子ども=親の養子(法的に戸籍上も養子になっている)」であれば、相続人としての立場にも影響が出てくるので、さらにややこしくなります。
6.「兄の相続分をなくす」方法はないの?
実は「相続人の廃除」という制度があります。
これは、被相続人(親)が「この子には相続させたくない!」と強く望むだけではなく、かなり重大な非行や虐待などがあったときに、家庭裁判所が認めることで発動する仕組みです。
ただ単に「長年連絡を絶っていた」という程度では、まず難しいです。
「いない間に親の面倒を見てなかったから」とか「子どもの養育を祖父母に丸投げしていたから」という理由だけでは、法律上の相続廃除が認められることはほとんどありません。
7.生前の対策がカギ!親がまだ元気なうちにできること

「なんだかモヤモヤする…。
兄に好き勝手されないように、もっと早く何かしておけばよかった!」と思う方も多いかもしれません。
そこで本来なら、親が生前からしっかり対策しておくことが大事になります。
遺言書を作ってもらう

親が元気なうちに、「面倒を見てくれた子に多めに相続させたい」という気持ちを、法的に有効なかたちで残しておくのが一番スムーズです。
公正証書遺言という形式で残しておけば、後々偽造やトラブルを疑われるリスクが低くなります。
ただし、先述のとおり「遺留分(最低限の取り分)」は兄にもあります。
たとえ親が「この子には一銭も渡したくない!」と書いても、完全に0にはできないかもしれません。
生前贈与を活用する
親が元気なうちに、あなたが介護や家事をする代わりに対価として財産を贈与してもらう、という形も考えられます。
ただし、金額が大きくなると「特別受益」という扱いになり、結局、相続時に差し引かれてしまう可能性も。
このあたりは、金額や時期、贈与の名目など、かなり慎重な設計が必要です。
もし本腰を入れて検討するなら、専門家(税理士や弁護士など)への相談が不可欠になります。
8.トラブル回避のためにやっておきたいこと

1. 兄の主張が正しいかどうかを冷静にチェック
「兄が行方不明だった間に、両親の財産が増えたか減ったか、あなた自身がどれだけ介護費用を負担してきたか」などを整理しましょう。
感情だけで突っぱねると、不利に働くこともあります。
2. 寄与分を主張するための証拠集め
兄と話し合いをする際にも、具体的な数字や記録を見せたほうが説得力があります。
3. 早めに専門家に相談する
相続問題は、素人だけでこじれると本当に大変。
結果として、裁判所のお世話になると何年も争うことになってしまうケースも…。
費用はかかりますが、早いうちに弁護士や司法書士、税理士などに相談して方針を固めるほうが、長期的には安上がりな場合が多いんです。
9.「すでに親が亡くなった」場合は?

もし親がすでに亡くなってしまっていて、「ああ、何の対策もしてなかった…」という場合。
今からできるのは以下のようなことです。
遺言が残っていないか確認する
自宅だけでなく、公証役場に保管してあることもあるので、一度は探してみましょう。
相続人をきちんと確定する
戸籍謄本をたどり、兄の子どもやほかに相続人はいないか、確認します。
兄の子どもが養子縁組をしていたり、ほかに行方不明の親族がいないかどうかを調べるのも大切です。
話し合い(遺産分割協議)を行う
相続人全員で話し合って遺産分割協議書を作成するのが基本です。
「話がまとまらない!」ときは家庭裁判所の調停を利用することになります。
寄与分や特別受益の主張
自分の負担や兄の状況を踏まえて、「私はこれだけ親の面倒をみていた」など主張をしっかり行いましょう。
10.まとめ:納得いく相続を目指すために

長年逃げ回っていた兄が突然戻ってきて、「相続の権利をよこせ!」と言われると、正直頭に血が上ってしまいますよね。
親からすれば、孫を育てていたり、あなたが介護に尽力したり、いろいろな事情があったとしても、法律的には「兄も相続人である」事実は変わりません。
しかし、「ずっと介護してきたのに報われないなんて…」と泣き寝入りする必要はありません。
寄与分などの制度を利用したり、事前に遺言を準備してもらったりすれば、多少なりとも貢献が反映される可能性はあります。
最終的には、「専門家(弁護士・税理士・司法書士)に相談する」ことが近道です。
相続は一度こじれてしまうと、家族関係にも大きなヒビが入ります。
少しでも話し合いをスムーズに、そしてあなたの努力が正当に評価される形で終わるよう、早めに動き出してみるのがおすすめです。

相続問題は、私たちの日常ではあまり馴染みがないようで、いざというときにバタバタしがち。
特に、兄弟間のわだかまりや親の介護など、感情面のトラブルが絡むと一気に複雑化します。
「まさか自分の家族が…」なんて思わずに、親の元気なうちから「もしものときはどうする?」と話し合っておくのが、もっとも大切な対策です。
蒸発兄がいつどんな形で戻ってくるかは誰にもわかりませんから…。
とはいえ、兄の突然の再登場も、法的には決してイレギュラーな話ではありません。
気持ちがざわつくときこそ冷静に、「法律のルール」「寄与分や遺言の活用」「専門家の力を借りる」という3つのポイントを押さえて、納得のいく結論をめざしましょう。
何より大切なのは、あなたがこれまで親やご家族のために尽くしてきたことが、できるだけ正当に評価されること。
大変な状況かもしれませんが、自分を責めすぎず、必要なサポートを得ながら乗り切ってくださいね。
心から応援しています!
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