こんにちは。とまとです!
相続の話って、どうも「むずかしそう」「なんだか堅苦しい」というイメージがありますよね。
でも家族の将来を考える上で、遺言書はとても大事です。
なかでも「自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)」は、専門家に依頼しなくても自分ひとりで書けるので、「手軽にできる」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ところが、この自筆証書遺言、書き方や保管の仕方にちょっとした落とし穴があって、内容が無効になってしまったり、家族がもめる原因になったりするケースが少なくありません。
そこで今回は、なぜ自筆証書遺言が無効になりやすいのか、そしてなぜ争いの種になりやすいのかを、わかりやすくお話ししたいと思います。
そもそも自筆証書遺言ってなに?

遺言書と聞くと、「遺言状」というドラマに出てくるような響きを思い浮かべる方もいるかもしれません。
遺言書は、法的に正しいルールで作成されていると、亡くなったあとに財産の分け方などを決めるときに大きな力を発揮します。
遺言書には大きく分けて3つの種類がありますが、その中でも「自筆証書遺言」は、名前のとおり“自分で書く”遺言書です。
紙とペン(最近では一部、パソコンで作成した一部の書面と併用できる制度もありますが、基本は手書き)を使って、自分で全文を書くのが決まりです。
「専門家に頼むとお金がかかりそう」「それほど財産もないし、子どもたちも仲がいいから大丈夫」などの理由から、自分ひとりでパパッと作成してしまう方も多いのですが、実はそこに大きな落とし穴が潜んでいるのです。
落とし穴1:形式を間違えると、そもそも無効に…

自筆証書遺言が無効になってしまう大きな理由の一つが、「形式的なルールを守れていない」というものです。
自筆証書遺言は法律で細かく書き方が決まっており、たとえば以下のようなポイントがあります。
これをうっかり忘れていたり、パソコンで文章を作成しただけで署名捺印だけ手書きにしていたりすると、法律上は「無効な遺言」とみなされることがあります。
たとえ内容がしっかりしていても、書式の不備で全部ダメになってしまうことがあるんです。
また、誤字や文章の訂正方法も定められており、単純に二重線で消してハンコを押すだけでは足りないケースもあります。
「どこをどう直したのか」を明確に記載しないといけないため、「ふだんの手紙感覚」だと不十分。
ここが大きなつまずきポイントです。
落とし穴2:内容があいまいだと、家族がもめる
次に、内容があいまいなまま書いてしまうと、残された家族の間でもめ事が起きることがあります。
たとえば「長男にこの家をすべて相続させたい」という気持ちがある場合には、「住所が○○の不動産を、長男○○に相続させる」というふうに、きちんと書かないといけません。
「家を長男にあげる」くらいの書き方だと、どの家なのか、土地は含むのか、建物だけなのかなど、解釈が分かれてしまうのです。
さらに、遺言書を書いたときの気持ちと、亡くなる時点での状況が変わっていることも、混乱を生みがちです。
こうした変化に対応していないままの遺言書は、読み手によって「これはこういう意味では?」と勝手に解釈され、そこから争いが生まれることがあるのです。
落とし穴3:見つからない、紛失する、隠される
自筆証書遺言は、書いたあとにどこかにしまっておくことが多いですよね。
引き出しの奥にしまったり、タンスの裏に隠したり、仏壇の引き出しに入れたり。
でも、遺言書は「見つからないと意味がない」んです。
このようなケースでは、せっかく書いた大事な遺言書が、そのまま「なかったこと」にされてしまいます。
また、「相続人にとって不都合な内容が書かれている遺言書だったので、こっそり隠した」なんて話も、残念ながらゼロではありません。
結局、争いが起きやすい状態をつくってしまうのです。
なお、近年は法務局で自筆証書遺言を預かってくれる「自筆証書遺言保管制度」というものがあります。
この制度を使うと、法務局が遺言書をきちんと保管し、家族が後から確認しやすくなります。
「自分で書くけど、ちゃんと保管はしてほしい」という方には、この制度がおすすめです。

落とし穴4:「書き直し」のルールを知らない
遺言書は、一度書いたらそれで終わりというものではありません。
何度でも書き直すことはできます。
ただ、その場合、以前に書いた遺言書と内容がぶつかったり、どちらが有効なのか不明になったりすることがあるのです。
基本的には「新しい日付で書いた遺言書が優先される」と法律で決められていますが、古い遺言書をちゃんと処分せずに残していたりすると、後々トラブルのタネになってしまうことがあります。
さらに、書き直しの際にもきちんと形式を守らないと、新しい遺言書自体が無効になる恐れがあります。
「もともとの遺言書に赤ペンで書き足して、訂正印だけ押した」みたいな自己流だと、せっかく書いた遺言書が無駄になります。
これも家族が困る原因になるので注意が必要です。
落とし穴5:書いたときの「心の状態」を疑われる

遺言書は、書いた本人が「判断能力をしっかり持っている状態」で書いたものでないと、のちのち無効と判断されることがあります。
たとえば、高齢になり認知症が進んできた方が書いた遺言書について、「本当に本人の意思で書いたの?」「だれかに都合よく書かされたのでは?」と、家族や親族が訴えを起こすケースもあるんです。
また、逆に「病気で意識がもうろうとしている時に書かされたのではないか」など、本人の意思ではなく、周囲の人が誘導して書かせた疑いがある場合もトラブルに発展します。
こうしたケースでは、せっかく書いた遺言書が裁判で争われ、「無効」の判決が出ることもあります。
特に自筆証書遺言は、専門家の立ち会いがなく、本人ひとりで作れるため、「ほんとうに本人の気持ちで書いたのか?」と疑われやすいのです。
どうしたら防げる?トラブル回避のポイント
では、こうした落とし穴をどうやって回避すればいいのでしょうか?ポイントをいくつかご紹介します。
自筆証書遺言も、法律で定められたルールをきちんと守ったうえで、定期的に見直しをすれば、それなりに安心して使える手段です。
また、家族の状況が変わるたびに(結婚・離婚・出産・相続人の病気など)確認して、必要があればその都度書き直すようにしましょう。
まとめ
自筆証書遺言は、自分で簡単に書ける分、落とし穴も多いのが現実です。
こうしたポイントをおさえておけば、「せっかく書いたのに無効…」なんてことにはならずにすみます。
いちばん大切なのは、ご自身の大切な思いを「間違いなく家族に伝える」ことですよね。
もし、自筆証書遺言の作成に不安があるなら、公正証書遺言を利用する方法もあります。
こちらは公証人が書類を作成してくれて、法律上の不備がないかをチェックしてくれるので安心感が高いです。
費用はかかりますが、そのぶん手間やトラブルを減らせます。
人生の最後に「もっとちゃんと遺言書を作っておけばよかった…」と後悔しないために、早めに対策をしておきたいですね。
将来の幸せも、今の安心も、ちょっとした心がけと情報収集で手に入ります。
ぜひ、ご自身に合った方法を検討してみてくださいね。
コメント