「相続放棄をしたら借金はすべてチャラになるのかな?」
実はそうではありません。相続放棄とは、あくまでも“自分が相続人としての権利・義務を放棄する”手続きであって、借金をゼロにする手続きではないんです。
ここでは、相続放棄と借金の関係、そしてトラブルを避けるための注意点をお伝えします。
相続放棄は「自分が相続しない」だけ
借金そのものは消えない
相続放棄すれば、自分は故人の借金を支払わなくて済みます。
しかし、その借金自体が消えるわけではないため、次の相続順位にいる親戚に支払い義務が移ることがあります。
相続放棄するときは、次の相続人に要連絡
相続人には順位(配偶者は常に相続人、子ども→親→兄弟姉妹…など)があります。
- たとえば、子どもがみんな相続放棄をしたら、その次は親や兄弟が相続人に。
- すると、知らないうちに借金の督促状が親や兄弟に届くことも…。
「親や兄弟が突然『借金の請求がきた!』と驚かないように」、相続放棄する前にきちんと連絡しておくほうがトラブル防止になります。
親族全員が相続放棄してもOK
「借金だけしかないし、親族みんな放棄して大丈夫かな?」と不安になる方もいますが、法律上は問題ありません。
各自が単独で相続放棄をすることができるので、結果として“親族全員が放棄”という形になることも珍しくありません。
故人の借金を知られたくないなら「限定承認」という選択肢も
「親の借金があることを、ほかの親戚に知られたくない…」という場合は、限定承認という手続きを検討してみましょう。
- 限定承認: プラスの財産の範囲で借金を返済し、残りの借金は支払わなくてOK。
- 相続放棄と違って“相続人として手続きを進める”ため、次の相続人に借金の連絡がいかないという特徴があります。
ただし、限定承認は手続きが複雑だったり、相続人全員で申し立てる必要があったりと、相続放棄より難しい面があります。
そのため、「手続きの手間」と「プライバシー(借金を隠したい)」を天秤にかけながら、自分に合った方法を選んでください。
まとめ
- 相続放棄は自分の相続権を放棄する手続きであり、借金そのものは消えません。
- 自分が放棄すると、次の相続順位の親戚へ支払い義務が移るため、事前の連絡が大切。
- 借金を親族に知られたくないときは、限定承認という方法もアリ。
相続は家族や親戚にとって大きなテーマです。後からトラブルになる前に、正しい知識と準備でしっかり対応していきましょう。
全員が放棄した後は「相続財産管理人」が活躍します!
相続放棄などで相続人がいなくなった場合、相続財産管理人という存在が活躍します。これは、相続財産の管理や清算を行ってくれる人で、家庭裁判所に選任を申し立てることで決まります。
どんなケースで選任されるの?
- 相続人がまったくいない、または全員が相続放棄したとき
- 例えば、故人に借金があったのに相続人が誰もいないと、債権者(お金を貸した側)が回収したくても困ってしまいます。そんなとき、相続財産管理人を選んで、財産を整理・清算してもらいます。
- 特別縁故者が、故人の財産を受け取りたいとき
- 長年同居して世話をしていたが、法定相続人ではない…という方が、自分の分をなんとか受け取りたい場合にも、相続財産管理人を立てて手続きを進めます。
- 不動産の管理義務があるとき
- 遠くにある不動産を管理しなければいけないケースなどで、誰も相続人にならないと困りますよね。そんなときにも相続財産管理人が選ばれることがあります。
相続財産管理人を選任するには?
相続財産管理人を選んでもらうには、家庭裁判所に「相続財産管理人選任審判」の申し立てを行います。
- 申し立てができる人:
- 利害関係人(例えば債権者や特別縁故者、特定遺贈の受遺者)
- 検察官
そして、相続財産管理人は債権者への支払い(清算)が終わった後の残りの財産を国庫へ引き渡す手続きも担当します。
選任しない場合は?
そもそも相続財産がほとんどなく、管理や清算の必要がないと判断される場合は、相続財産管理人を選任しないこともあります。
- 債権額が少額の場合など、費用や手間をかけるほどではないときは、管理人の手続きを見送るケースもあるのです。
まとめ
- 相続財産管理人は、相続人がいない(または全員放棄した)場合の財産整理役。
- 選任するには、家庭裁判所への申し立てが必要。
- 清算後に財産が残った場合は、最終的に国庫へ帰属。
- 財産がほぼ無い場合などは、選任しなくてもOK。
相続人がいないと、財産整理や債権回収はなかなか進まず大変です。そんなときのための仕組みとして、相続財産管理人を知っておくと安心ですね。
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