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相続放棄できなくなる「単純承認」とは? 思わぬ落とし穴にご注意を!

「相続放棄しようかな…」と考えているときに、ちょっと気になるキーワードがあります。

それが「単純承認(たんじゅんしょうにん)」。

聞いたことはあっても、なんだか難しそうですよね。

ですが、うっかり単純承認とみなされる行為をしてしまうと、「相続を放棄したいのに、事実上できなくなってしまった!」なんてことにもなりかねません。

今回は、そんな相続トラブルを避けるために、単純承認とみなされやすい行為をやさしく紹介します。

うっかり単純承認とみなされる行為をしてしまうと、「相続を放棄したいのに、事実上できなくなってしまった!」なんてことにもなりかねません。

単純承認ってなに?

簡単にいうと、「自分は相続人であることを承認するよ」という法律上の態度を取ることです。

相続財産の一部でも受け取る意志を示すと、それだけで「単純承認した」と判断されることがあります。

単純承認になると、相続放棄がもうできなくなってしまうので注意が必要です。

以下では、相続放棄を考えているのに「単純承認」とみなされてしまう代表的な行動について、もう少し詳しく解説します。

うっかりやってしまいそうなケースも多いので、ぜひ参考にしてくださいね。

1. 被相続人名義の口座からお金を引き出す

生活費に使う


「ちょっとだけ借りるつもりだった」「お葬式の準備でバタバタしていて…」という気軽な気持ちで、被相続人(亡くなった方)の口座からお金を引き出して自分の生活費にあててしまうと、相続財産を“自分のもの”として扱ったと見なされる可能性があります。

ただし、「やむを得ない費用(※葬儀費用など)」を被相続人の口座から支払うことがすぐに“単純承認”になるわけではない場合もあります。

法律上グレーな部分があるため、状況によっては専門家の見解を聞くほうが安心です。

債権者への返済に充てる

被相続人が残した借金の返済に、口座からお金を引き出して支払う場合も要注意。

結果として「相続財産を承継した行為」とみなされるリスクがあります。

返済が必要かどうかも含め、まずは相続放棄の手続きをどうするか考えてから動いたほうが安全です。

2. 形のある財産(不動産・車など)を処分する

不動産を売却・賃貸に出す


被相続人名義の家や土地を、「固定資産税がもったいないから」「そのまま放置しておくと管理が大変だから」という理由で先に売ってしまったり、誰かに貸して家賃を受け取ったりすると、単純承認になる可能性が高くなります。

名義変更をしていなくてもNG


たとえ名義を変えていなくても、「勝手に事実上、自分の所有物のように使っている」とみなされるとアウトです。

売買や賃貸の契約行為は、「相続を事実上承認した」証拠になりかねません。

車やバイクを処分・運転する


車やバイクは価値がわかりやすく動かしやすいため、つい「使わないし早めに手放そう」と思いがち。

でも、勝手に廃車手続きや売却をしてしまうと、それも単純承認とみなされるおそれがあります。

また、手放すどころか気軽に自分の移動手段として乗り回していると、「事実上、自分の所有物として扱っている」と判断される場合があります。


3. 財産を隠したり、勝手に流用・処分する

貴金属・現金・家財道具を“こっそり”持ち出す


「これくらいならバレないだろう…」と、被相続人の部屋から現金や宝石などを勝手に持ち出す行為は、まずトラブルのもと。

相続放棄どころか、あとから「不正に財産を得た」と批判されるリスクも生まれます。

しかも法律上は「単純承認した」とみなされるだけでなく、ほかの相続人や債権者との紛争に発展しやすいので、絶対におすすめしません。

親族に勝手に渡してしまう


「とりあえず実家に置いてもらう」「兄弟に預けておく」というのも、状況によっては“隠す”と判断されるケースがあります。

自分が所有者としてコントロールしていると見なされると、相続財産を事実上承継したことになりかねません。


4. 相続放棄の手続きをしないまま3か月以上経過する


相続が始まって(被相続人がお亡くなりになった日から)3か月以内に相続放棄の申述をしないと、そのまま単純承認したと見なされる場合があります。

事情によっては、家庭裁判所に申し立てることで期間の延長が認められることもあるので、もし3か月では時間が足りないと思ったら、早めに相談しましょう。


5. 被相続人の権利や義務を積極的に行使する

借金の取り立てをする


被相続人が誰かに貸していたお金を、相続人であるあなたが「返してもらいます!」と取り立てる行為も、単純承認とみなされる可能性があります。

「元々うちの親の財産だから、自分が回収していいはず」と思うかもしれませんが、相続放棄の意思がある場合は特に慎重に。

放棄する前に回収してしまうと、相続を受け入れた行動とみなされがちです。

各種契約の更新をする


被相続人名義の保険やリース契約などを、あなたがそのまま継続・更新してしまうのも注意点。契約継続の意思表示が「相続財産を継承した」と判断されることがあります。

死亡保険金の受け取りは大丈夫?単純承認にならない具体例は?

相続放棄を検討している人の中には、「死亡保険金を受け取ったら単純承認になるんじゃないの?」と心配される方も多いですよね。

実は、ふつうの生命保険金であれば、受け取っても単純承認にはならない可能性が高いんです。

なぜなら、生命保険の死亡保険金は「受取人の固有の財産」とされ、被相続人(亡くなった方)の財産には含まれないと考えられているからです。

ここでは、死亡保険金にまつわる注意点と、単純承認にならない具体例をいくつかご紹介します。

なぜ死亡保険金の受取りが単純承認にならないの?

生命保険の死亡保険金は、遺産に含まれない

判例:最高裁判所平成16年10月29日決定

1. 生命保険金は「相続財産」ではない

一般的な生命保険では、保険契約で指定された「受取人」が直接受け取る仕組みになっています。

法律上は、死亡保険金は相続財産(遺産)には含まれず、受取人の“個人の財産”とされています。

そのため、保険金を受け取ったからといって、相続財産を受け入れた(=単純承認した)ことにはならないのが原則です。

2. ただし、保険の種類に要注意

もし保険契約上、「保険金の受取人=亡くなった方の遺産(法定相続人ではなく“相続人全員”など)」といった設定になっている場合は、保険金が相続財産になる可能性があります。

  • 例)「受取人を『被相続人の相続人』とまとめて指定している」「遺産として一括管理する趣旨が明確な契約形態」など
    契約書の内容をしっかり確認し、わからない場合は保険会社や専門家に相談すると安心です。

単純承認にならない具体例

1. 相続放棄の手続きを進めつつ、死亡保険金だけ受け取る

相続財産には手をつけず、あくまで「自分が受取人に指定されていた生命保険金だけ受領する」場合、通常は単純承認とはならないと考えられています。

保険契約上、具体的に「〇〇さん(個人名)が受取人」となっているケースでは、保険金をその個人が直接取得します。相続の手続き(放棄するかどうか)とは別の問題として扱われます。

  • ポイント: 保険金の振り込み後も、相続財産そのものには触れず、勝手に引き出したり処分したりしないように注意しましょう。

2. お葬式などでやむを得ず必要な費用を、一時的に被相続人の口座から支払う

厳密にいえば、被相続人の口座からお金を出すときは注意が必要ですが、実務上は葬儀費用など「最低限避けられない費用」のための出金は、直ちに単純承認になるとは限りません。

  • ただし、状況によってグレーゾーンもありえます。不安がある場合は、先に専門家に相談してから出金を検討しましょう。

3. 市町村の補助金や弔慰金を受け取る

自治体から支給される「葬祭費用の補助」「弔慰金(ちょういきん)」などは、保険金と同様に“相続財産”とは性質が異なることが多いため、単純承認には直結しないケースが多いです。

まとめ:迷ったら早めに専門家に相談を

相続放棄を考えているのに、うっかり単純承認とみなされてしまうと大変です。

相続放棄を考えるなら、まずは「財産に一切手をつけない」ことが鉄則です。

  • 口座からお金を引き出さない
  • 不動産や車を処分しない
  • 財産を勝手に使わない
  • 3か月以内の相続放棄手続きを忘れない

これらを守りつつ、必要があれば早めに弁護士や司法書士など、相続の専門家へ相談しましょう。相続問題は感情も入りやすく、思わぬところで判断ミスをしがちです。

「こんなことをしたら単純承認になっちゃうのかな?」と迷うような場面があれば、ぜひプロの意見を聞くことをおすすめします。

正しい情報を得てスムーズに進めれば、後悔やトラブルを回避しやすくなりますよ。

「知っていてよかった!」と思えるような知識を身につけて、安心して相続手続きに臨んでくださいね。

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