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貢献を相続分に加算する【寄与分】ってなに?~難しい用語をわかりやすく具体例とともに解説

相続というと、亡くなった方(被相続人〈ひそうぞくにん〉と呼びます)の財産を、子どもや配偶者などが受け継ぐことをイメージしますよね。

相続って、家族や親せき同士のお金や財産の分け方が大事になってくる場面です。ところが、この相続を決めるときに「寄与分(きよぶん)」という言葉が出てくることがあります。

「聞いたことはあるけど、よくわからない」「文字を見ても難しそう」と思われる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、寄与分とはいったい何なのか、なるべくやさしくご説明します。ゆっくり読んでみてくださいね。


寄与分ってどんな意味?

寄与分というのは、「家族の中の誰かが、被相続人の財産を増やしたり、あるいは維持するために特別に貢献(こうけん)した場合に、その貢献を相続分に加算してあげよう」というしくみです。

「寄与」という言葉は、「役に立つこと」「貢献」という意味で、世の中でもたまに耳にすると思いますが、相続の場面ではちょっと独特の意味合いを持っています。

たとえば、長年にわたり家業を一生懸命手伝って、お店の売り上げを伸ばしたり、お年寄りのお世話をずっとして病院代や介護費用の負担を軽くしたりして、普通よりもかなり大変な協力をした場合が考えられます。

このように「他の相続人よりも特別がんばったよね」といえる場合、寄与分を認めてもらえることがあるのです。


寄与分がなぜ大切なの?

「でも相続って、遺言や法律のルールで分けるんじゃないの?」と思われるかもしれません。たしかに、法律では「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」といって、配偶者や子ども、兄弟姉妹など、相続人それぞれの取り分が大まかに決まっています。

ところが、法定相続分だけで分けてしまうと、「あれ、私、ずっと家業を手伝っていたのに、全然その分が評価されない…」とか、「お母さんの介護をがんばってきたのに、何も差がつかないの?」と、不公平に感じる場合が出てきてしまうんです。そんなときに、寄与分がカバーしてくれる、というわけですね。


寄与分が認められる具体例

ちょっとわかりやすいように、具体的な例をいくつか挙げてみます。

家業を手伝って財産を増やした場合


たとえば、被相続人が洋品店を営んでいたとします。長男が学校を卒業してからずっとお店を手伝い、毎日のように売り上げアップに貢献したとしましょう。その結果、店の評判が上がり、お客さんが増えて、財産が大きくなりました。普通に働いている以上の協力があったと認められれば、長男には寄与分がつく可能性があります。

介護や看護をして費用を減らした場合

被相続人のお世話をして、施設に入れなくてもすむようにしたり、通院の手間を軽くしたりして医療費や介護費を減らした場合もあります。たとえば、長女がお母さんの身の回りのケアをずっと担当していたおかげで、家計としても負担が少なくなった――そんなケースでは寄与分が考えられます。

亡くなる前の家計管理をしていた場合


お父さんが高齢になり、金銭管理が大変になったので、長女が代わりにやりくりしていた。結果として節約や資産運用がうまくいき、お父さんの預貯金が減らずに済んだ。このように、「財産が減るのを食い止めたこと」による寄与が認められることもあるのです。


寄与分をどのように計算するの?

寄与分を計算する具体的な方法には、法律上はっきりとした明細があるわけではなく、ケースバイケースになります。たとえば「家業を手伝っていた人の給料は通常これくらいだから、これだけプラスしてもいいよね」といった話し合いをすることも多いです。

もし相続人同士で話し合ってもまとまらない場合は、家庭裁判所(かていさいばんしょ)に調停(ちょうてい)や審判(しんぱん)を申し立てて決めてもらうこともあります。たとえば、どの程度の寄与があったか、どれくらいプラスの財産が生まれたか、他の相続人とのバランスはどうかなどを総合的に判断して決められます。


寄与分を請求したいときはどうする?

「私、かなり頑張ったんだけど、このまま普通に分けるのは不公平かも…」と思うときには、まずは家族や親せき同士で話し合うことが大切です。そこで合意が取れれば、一番トラブルが少なくて済みますよね。

ただ、相続にはいろいろな思いが交錯(こうさく)してしまうものです。「自分はこんなにがんばったのに…」「いやいや、そんなことはないでしょう」などと感情がぶつかると、話し合いは難航することもあります。

もし、どうしても折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申立てるという流れになります。専門家(弁護士や司法書士など)に相談してスムーズに進めてもらうのも一手ですよ。


遺言書で寄与分を先に考慮しておくことも大切

実は、遺言書(いごんしょ)があれば、被相続人自身が「この子には家業を手伝ってもらったから多めにあげたい」という気持ちを直接形にすることができます。つまり、寄与分を踏まえた遺言書を書いておくことで、のちのちのトラブルを減らすことにもつながるんです。

とはいえ、遺言書の作成には形式や書き方にルールがあるので、一度専門家に相談したり、市区町村の無料相談会などを利用したりするのがおすすめです。きちんと手続きを踏まえた上で、「自分の気持ちを確実に残しておく」ことが、家族への思いやりにもなるでしょう。


寄与分をめぐるトラブルを避けるために

寄与分の話をするときにやっかいなのは、「どこからが特別?」「どれくらい頑張ったら認められるの?」といった、線引きが曖昧(あいまい)なところです。お金だけでは測(はか)れない介護の苦労や、長年の労力などは、簡単に数字に置き換えられるものでもありません。

そうした曖昧さがもとで、相続の場面で言い争いが起こりがちです。そこで、事前に家族同士で話し合ったり、「〇〇年から〇〇年まで店を手伝っていた」「お母さんの介護にかかった費用はこんな状況だった」という記録をこまめにつけたりしておくことが大事です。証拠や記録があれば、「こんなにがんばっていたよね」と説得力をもって説明することができます。


まとめ:寄与分は「特別な貢献を評価する制度」

寄与分は一見難しそうな言葉ですが、要するに「特別に家業や介護などをがんばって財産を増やしたり、減らさないように努力した人が、そのぶん多く財産をもらえる可能性がある仕組み」です。

相続は、残された家族にとってとても大切で、同時にデリケートなテーマです。特に、高齢の方がいらっしゃるご家庭や、家業を受け継いでいるご家庭では、何かとトラブルが起きやすいと言われています。しかし、寄与分という考え方を知っておくだけで、「こんなに頑張ったのに報われない…」といった不公平感を少しでもやわらげることができるでしょう。

「寄与分を請求するかどうか」を含めて、どうしても話し合いがスムーズにいかない場合は、法律の専門家や税理士、司法書士など、相続のサポートを得意とする人に相談してみてください。早めに動くことが、あとあと大きな負担を軽減してくれますよ。


最後に

相続については、本当にいろいろなケースがあり、家族関係が複雑だとさらに絡み合ってしまいます。寄与分の制度は、「みんな同じだけど、特別がんばってくれた人はそのぶんもらえるようにしましょう」というもの。とてもシンプルな考え方ですが、実際の手続きには細かいポイントがたくさんあります。

「自分の家の場合はどうなるのだろう?」「私がしてきたお世話は寄与分に当たるの?」と気になる方は、一度専門家に相談してみるのがおすすめです。早めに知って対策をしておけば、万が一のときでもあわてずに済みます。何より大切な家族の間で、後味の悪いトラブルにならないように、元気なうちに準備をしておきたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございます。寄与分について少しでも「なるほど!」と思っていただけたなら幸いです。相続は、誰しもいつかは向き合わなくてはならないもの。でも、少しでも知識があればいざというときに慌てずに済みますし、大切な家族を守ることにもつながります。ぜひ、お時間があるときに家族で話題にしてみてくださいね。

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