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【相続人の確定】亡くなった方の遺産を引き継ぐ相続人は誰?誰がどれだけ遺産相続するか確認しましょう

相続人は誰?

「人が亡くなったとき、遺産を親族が受け取る」という事実は広く知られています。
しかし、「遺産を誰が受け取るか」については詳しく知らない人が多いようです。

「遺産をめぐる親族間の争い」はドラマや映画でよく見かけますが、民法には相続人の範囲、順番、相続分などのルールが定められています。
遺産の分配についての話し合いも、これらのルールに基づいて行われます。

基礎知識

相続人の範囲と法定相続分:国税庁HP

被相続人とは

「被相続人」は、相続財産を残して死亡した人のことを指します。

相続人とは

「相続人」は、被相続人の遺した相続財産を受け継ぐ人を指します。
「相続財産」は故人が残した財産のことで、現金や銀行預金、有価証券、不動産などの「積極財産」だけでなく、借金や買掛金、未払いの税金といった「消極財産」も含みます。
注意すべき点は、人が亡くなった場合、その故人が有していた全ての権利義務は「相続人」に継承されるということです。

相続権は民法で定められており、特定のケースを除き、これに当てはまらない場合には相続人としての資格はありません。民法に基づく相続権を持つ人を「法定相続人」と言います。
相続人と法定相続人は一見同義に見えますが、前者は「実際に相続財産を継承する人」、後者は「初めに相続権を持つ人」を指します。例えば、法定相続人が相続放棄した場合、その人は法定相続人でありながら相続人ではありません。

相続人は遺言の有無によって異なる

遺産の相続者は亡くなった人(被相続人)が遺言を残したかどうかで決まります。
相続においては、原則として遺言書の内容が優先されます(民法第964条)。

遺言書で指定された人、財産、割合が優先されます。
そして、遺言によって財産を受け取る人を受遺者と呼びます。

ただし、遺言書が民法の規定に準じていない場合、その内容は無効となります。

法定相続人の範囲は民法で定められています

遺言書がない場合や、遺言書で指定されていない遺産の相続について考える際、民法は「誰が相続人になるか」を規定しています。これらの権利を持つ人々を「法定相続人」と呼びます。

法定相続人には、被相続人の配偶者及び血縁のある人(血族)が含まれます。ただし、血族については、相続人となる順序や遺産を受け取る割合(相続分)には特定のルールがあります。

法定相続人の範囲と順位

とまとちゃん
とまとちゃん

相続人となるのは、亡くなった方の配偶者(妻または夫)と誰かの組み合わせです。

  • 第1順位 直系卑属 ① 子(実子、養子)② 孫(子が既に死亡している場合)③ 曾孫(子、孫が既に死亡している場合) 認知された子や養子縁組された子も含まれますが、配偶者の連れ子は含まれません。
  • 第2順位 直系尊属 ① 親(実父母、養父母)② 祖父母(実父母、養父母が既に死亡している場合)
  • 第3順位 兄弟姉妹① 兄弟姉妹② 甥姪(兄弟姉妹が既に死亡している場合) 父母が異なる兄弟姉妹も等しく遺産相続人となります。

法定相続人の範囲はどこまで?親類であっても相続権がない人

たとえ被相続人の親族であっても、前述の法定相続人に該当しない人は、原則として遺産を受け取ることはできません。しかし、遺言書で遺産の受取人として指定されていれば、受遺者として遺産を受け取ることが可能です。これがなければ、被相続人とどれだけ親しい関係であったとしても、または何を尽くしていたとしても、遺産は1円も受け取ることはできません。

「被相続人と縁があっても相続人になれない人」は次のような人です。

  • 内縁の妻
  • 離婚した元配偶者
  • 養子縁組していない配偶者の連れ子
  • 被相続人の姻族(配偶者の兄弟姉妹や親など)
  • 相続の順位により法定相続人から外れる人(子が生きている場合の父母や兄弟姉妹など)
  • いとこ
  • 伯父伯母、叔父叔母

ただし、一定の手続きを経ると、これらの人々も特別縁故者として相続財産を引き継ぐ可能性があります。また、民法(相続法)の改正により、2019年7月1日以降、被相続人が生前に介護や看護に尽力した長男の嫁などの特定の親族は、特定の要件を満たすと特別寄与料を相続人から請求できるようになりました。

法定相続人でも相続権がない例

逆に、法定相続人であっても遺産相続できない人も存在します。ドラマや映画では「親族なら誰でも遺産をもらえそう」に見えますが、配偶者と一定の血縁者以外は相続人になれないのが実態です。つまり、以下に該当する人は「遺産がもらえそうでも、実際にはもらえない人」です。

相続権を剝奪される相続欠格

相続欠格とは、特定の欠格事由に該当する相続人の相続権が手続きなしで剥奪される制度を指します。欠格事由に該当する人は、配偶者や子でも相続人にはなりません。

【欠格事由】

  • 故意に被相続人や他の可能な相続人を死亡させ、または死亡させようとした結果、刑罰を受けた場合。
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴を行わなかった場合。
  • 詐欺や強迫により、被相続人の遺言書の作成・撤回・取消・変更を操作した、または故意に妨げた場合。
  • 被相続人の遺言書の内容を偽造・変造したり、破棄したり、隠したりした場合。

民法は、相続において被相続人の意思を最大限尊重するように規定しています。その被相続人の意志を無視したり、民法が目指す相続のあり方を歪めるような行為をした人は相続権を失います。

被相続人が相続権を剝奪する相続廃除

相続廃除された人も相続人になりません。相続廃除とは、被相続人の請求にもとづき、家庭裁判所が相続人の相続権を剥奪する制度をいいます。いずれ被相続人になる人は、次の廃除事由がある場合、廃除の請求を生きている間に(あるいは遺言により)家庭裁判所に行うことができます。

  • 推定相続人(将来の相続において相続人になりうる人)が被相続人に対して虐待をし、又は重大な侮辱を加えたこと
  • 推定相続人に著しい非行があったこと

なお、相続廃除の対象になる人は、配偶者と第一順位・第二順位の相続人に限られます。第三順位である兄弟姉妹は対象外です。

相続放棄した人

相続権の放棄、つまり、被相続人の現預金や土地などのプラスの財産だけでなく借金や未納税金などのマイナスの財産も含めたすべての財産に関する相続を放棄した人も相続人になりません。

相続放棄を行うならば、相続開始から3か月以内に家庭裁判所にその旨を申し立てなくてはなりません。

なお、相続放棄は先に説明した代襲相続の要因になりません。つまり、被相続人の子が相続放棄をした場合、「最初から相続権がなかった」とみなされるため、被相続人の孫は相続放棄をした子に代わって相続人になることはできません。

また相続放棄は、異なる相続順位の人が同時に手続きはできません。先順位の相続人がいる場合、先順位の相続人全員の相続放棄の申述が受理されてから、次順位の相続人が相続放棄が可能となります。つまり第2順位の人は、第1順位の人すべてが相続放棄をした段階で、相続放棄の手続きが可能になります。

相続人の範囲と人数で相続割合(法定相続分)は変わる

相続人が誰になるか、何人になるかで相続割合(法定相続分)は変わります。それぞれのケース別に解説します。

相続人が配偶者と子の場合の相続割合

相続人が配偶者と子の場合、相続割合は次のようになります。

  • 配偶者が2分の1、直系卑属(子や孫)が2分の1
  • 配偶者がいない場合、子どもの人数で等分する

たとえば、被相続人の死亡時に生きている親族が配偶者と子と孫、そして父母であれば、相続順位により配偶者と子が相続人になります。

それぞれの相続割合は配偶者と子どもで2分の1ずつとなります。このとき、孫と父母は相続人になれません。

また、血族側の相続人が複数いる場合には、その人数で財産を分けます。子が1人ではなく2人の場合、2分の1の相続分を2人で分けるため、子1人当たりの相続分は4分の1となります。

配偶者が死亡、もしくは相続放棄をしていて、相続人が子どものみの場合は、子どもの人数に応じて等分します。子どもが3人であれば、それぞれの相続割合は3分の1となります。

相続人が配偶者と親、兄弟姉妹の場合の相続割合

相続人が配偶者と親または兄弟姉妹の場合、相続割合は次のようになります。

【配偶者と第2順位の相続割合】

  • 配偶者が3分の2、直系尊属(父母や祖父母)が3分の1
  • 配偶者がいない場合、直系尊属の人数で等分する

【配偶者と第3順位の相続割合】

  • 配偶者が4分の3、兄弟姉妹(甥姪)が4分の1
  • 配偶者がいない場合、兄弟姉妹で等分する

被相続人に直系卑属がいない、もしくは直系卑属全員が相続放棄をしているケースでは第2順位(直系尊属)が相続人となります。同様のケースで両親・祖父母もいない、もしくは全員が相続放棄をしている場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。

あまり例はないですが、両親が相続人のケースで両親が亡くなっており祖父母が存命の場合は、祖父母が相続します。

また相続順位が低い相続人と配偶者が相続する場合は、配偶者の相続割合が大きくなります。

このように家庭環境によって、誰が相続人になるか、また相続人の人数によって相続割合も変化します。被相続人に離婚歴があった場合など相続人はより複雑になる可能性があります。誰が相続人となるかを調べる「相続人調査」は非常に重要です(後述)。

孫や甥姪が代わりに相続する代襲相続のケース

もし被相続人の死亡時に存在している親族が配偶者と孫、父母だったら誰が相続人になるでしょうか?

配偶者と第2順位の父母が相続人になりそうにも感じますが、民法のルールでは相続人になるのは配偶者と孫です。孫は既に亡くなっている子に代わって相続人になるのです。これを「代襲相続」といいます。

代襲相続とは、本来生きていれば相続人になるはずの人(被代襲者)が相続開始以前に死亡している場合、その人の直系卑属(代襲者)が代わりに相続分を引き継ぐことをいいます。

上の図は被相続人に配偶者はいなく、子どもは2人。子どもの1人は相続開始以前に亡くなってしまっており、被相続人の孫が2人いる場合の相続割合です。

また同様に兄弟姉妹が相続人となるケースでは甥姪が相続分を引き継ぎます。

なお、代襲相続が発生するのは被代襲者の死亡だけではありません。後述する「相続欠格」「相続廃除」により相続権を失った場合も代襲相続の要因となります。

法定相続人や受遺者の範囲を把握する方法と手続き

相続が発生した場合、相続人や受遺者が誰なのかを把握する必要があります。
具体的な手続きは次の通りです。

遺言書の調査・検認

最初に確認することは遺言書の有無です。
前述のように、相続人とその相続割合は遺言書の内容によります。

自宅を探すだけでなく、銀行や弁護士、司法書士、税理士に預けられている可能性も考慮しましょう。
公正証書遺言の場合は、公証役場で存在を確認できます。
さらに、2018年以降の民法(相続法)の改正により、法務局で自筆証書遺言を保管できるようになりました。

全ての可能性を探り、遺言書の存在を徹底的に確認しましょう。
自筆証書遺言が見つかった場合、開封せずに速やかに家庭裁判所に提出し、検認の申し立てを行います。検認は、遺言書の内容を確認し、相続人に通知するとともに、内容の改ざんや偽造を防ぐ手続きです。

法定相続人は戸籍謄本を調査

遺言書の調査と検証と同時に、推定相続人(相続人になる可能性がある人々)の詳細な調査が必要です。

現代の複雑な家庭状況のため、相続権を持つ人がどこにいるかは明らかではありません。被相続人が前妻との間に子供を持っていたり、生前に養子縁組をしていた可能性もあります。推定相続人の確認は戸籍謄本を取得することで行います。

取得するべき戸籍謄本は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの全てです。相続人全員の戸籍謄本も必要です。戸籍上で新たな相続人が見つかったり、相続人の中に行方不明者がいる場合は、その戸籍謄本と附票を取得し、連絡先を探して連絡を取る必要があります。

遺留分

しかし、遺言によって被相続人が自分の財産を自由に分割できるとはいえ、それを無制限に認めてしまうと、法定相続人が何も相続できないという不合理な状況が生じる可能性があります。

法定相続人の一部は、「遺留分」という最低限継承できる財産が保証されており、これにより不適切な遺産分割を防ぎます。

遺留分が保証されているのは、兄弟姉妹を除く法定相続人です。被相続人の遺言が自身の遺留分を侵害する内容だった場合、家庭裁判所で「遺留分侵害額請求の手続き」を行うことで遺留分を取り戻すことが可能です。

【相続人Q&A】相続人の範囲に関するよくある質問

相続人が誰になるかは非常に複雑です。この範囲について頻繁に出る質問や疑問に答えます。

養子は相続人となりますか?

養子は実子と同じように扱われ、相続人になります。ここで注意すべきは、「普通養子」と「特別養子」の違いです。

普通養子の場合、新たに養親との親族関係が発生しますが、実親との親族関係も続きます。つまり、養親と実親の両方の推定相続人になります。
特別養子の場合は、養親との親族関係が発生すると実親との親族関係は途絶えます。そのため、養親の推定相続人にはなりますが、実親の推定相続人にはなりません。

相続人が未成年でも大丈夫ですか?

原則として、未成年者は民法上、遺産分割や相続などの法律行為を単独で行うことが認められていません。そのため、相続人が未成年者の場合、代理人を立てる必要があります

通常、親が子の法定代理人となりますが、「配偶者と未成年者の子が同時に相続人になる」相続の場合、親(配偶者)は子の代理人になれません。これは相続において親と子が利益相反関係にあるためです。この場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。選任された特別代理人が子の代わりに遺産分割協議に参加します。

胎児は相続人になれますか?

相続が始まった時点で、被相続人の子や孫、兄弟姉妹などに該当する胎児がいる場合、その胎児も相続人になります。これは民法が胎児を「すでに生まれたもの」として扱うためです。ただし、この扱いは胎児が後日無事に生まれた場合に限ります。流産・死産・中絶の場合、胎児は最初からいないものとみなされ、相続人にはなりません。

行方不明者がいる場合は?

相続人が行方不明の場合は、相続人の戸籍の附票から住所を調べ、直接訪れるか、手紙を送るなどして連絡を取る努力が必要です。

それでも連絡が取れない場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立てを行います。家庭裁判所から許可が下りれば、この不在者財産管理人が行方不明の相続人代わりに遺産分割協議に参加します。行方不明者が見つからない場合は、通常、弁護士などの専門家に相談し、対策を依頼します。

遺言書もなく、相続人もいない場合は?

遺言書がなく、相続人もいない場合、家庭裁判所は相続財産管理人を任命します。任命の意向は2ヶ月間公表され、その後、相続財産管理人は公告により相続人や相続債権者を探します。2ヶ月から6ヶ月間の公告期間中にも相続人が現れない場合、「相続人の不存在」が確定し、遺産は国庫に帰属します。

また、相続人探索の公告期間中に権利を主張する人が現れない場合、被相続人の特別な親族(例えば内縁の妻)が家庭裁判所に相続財産の分配を申し立てることができます。相続財産分配が認められれば、特別な親族は清算後に残った相続財産全部または一部を取得できます。

相続人の中に認知症の者がいるときはどうですか?

A相続人の中に、認知症や知的障がい、精神障がい等により、自分の行為や、その行為の結果がどのような意味を持つのか判断できない方がいる場合、家庭裁判所に後見開始の審判を申立てて、成年後見人を選任してもらい、その成年後見人と遺産分割協議をする必要があります。

異父・異母兄弟の相続分はどうなりますか?

兄弟姉妹が相続人となる場合、父母を同じくする兄弟姉妹と、異父・異母兄弟姉妹とでは法定相続分が異なります。異父・異母兄弟姉妹の相続分は、父母を同じくする兄弟姉妹のそれの半分となります。

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